折々の記

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岩波ホールで映画鑑賞

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昨3月7日、神田神保町の岩波ホールで映画鑑賞。
このホール、映画の上映を始めて40周年。
そしてここで上映する映画につして大いに貢献された
高野悦子さんが亡くなられて一周忌。

過日、新聞のコラムでこの映画の紹介記事が目に入り、
今回観賞することになった映画は「家族の灯り」。
原題は Gebo et l`Ombre。
昨年12月に105歳を迎えたばかりの
現役最高齢のマノエル・ド・オリヴェイラ監督の作品。
ポルトガルの作家、ラウル・ブランタンの戯曲を
監督自身が脚色を担当して映画化。

1回目の上演が11時半開演、11時開場となっており、
11時5分前に会場に行くと、
220席のこじんまりとしたホールのメインの座席は
すでに座っていたり、コートが置かれていたり。
開演前に周りを見ると、ほぼ満席、
圧倒的に中高年齢のご婦人ばかり。
男性客は数えるほど。

港だろうか、一人の若い男が
「自分ではない」と言いながら逃げまどうところが
一瞬映し出され、これから始まる物語を示唆しているかのよう。
夕闇が迫り灯りがともされ、穴倉のような
薄暗い家の部屋が映し出される。
仕事を終えた男が寒さに震えながら家に着くと、
二人の女が出迎える。

初めから終わりまで、この部屋にカメラは向けられたまま。
一幕物の舞台を見ているような、
レンブラント時代の絵を見せられているような感を抱く。
登場人物の会話がよどみなく続く。
この会話により、登場人物の関係、
それぞれの思いや人生観を知らされる。

帰宅した男は家の主で、ジェボ(演じるのはマイケル・ロンズデール)。
迎えた女の一人は、ジェボの妻でドロティア
(演じるのはクラウディア・カルディナーレ)。
もう一人の女は息子の嫁でソフィア(演じるのはレオノーレ・シルヴェイラ)。
ジェボはある会社の帳簿係、集金業務を終え、
帰宅してから帳簿の整理をしたり、
妻とは結婚して40年になる。

画面は部屋の中で3人が、時にはジェボとドロティア、
ジェボとソフィアの2人の場合もあるが、会話の場面が続く。
この会話をしっかりと聞かないと
(実際はフランス語なので、日本語の字幕を見ないと)、
登場人物の人間関係もわからないし、
何が起こっているのかも理解できない。
日本語の訳が硬すぎて、ニュアンスが十分に出てないように
感じたのは残念である。

話題のテーマは8年前に失踪した息子のことだと、
だんだんとわかってくる。
失踪した息子を盲目的な愛で信じ続ける母親、ドロティア。
置き去りにされ哀しみの中で毎日過ごす嫁のソフィア。
そして家族を守り、最後に大きな決断をする実直なだけの父。
この父親、ジェボを演じるマイケル・ロンズデールが素晴らしい。
息子が失踪したわけを唯一知っているのが父親、
母親にはそのことを絶対に語ろうとしない。
嫁のソフィアを実の娘のようにかわいがり、
それとなくソフィアには息子のことを少しばかり、
漏らしたりしている。

或る晩、突然、息子のジョアン(演ずるのはリカルド・トレバで、
オリヴィエラ監督の孫)が帰ってきて、
部屋の雰囲気が変わる。
この部屋に時折姿を見せるのが、
隣人の男性(演じるのはルイス・ミゲル・シントラ)と
隣人の女性(演じるのは、何と86歳になるジャンヌ・モロー)。

決して面白いとか楽しい映画ではない。
登場人物は6人だけ、カメラアングルも一点に絞られ、
いかにも暗い感じの映画である。
それでも最後まで映像に引き込まれ、
家族の問題を考えさせられた映画である。

この映画のレビューが出ていたので、一部をご紹介。

「まるでレンブラントの絵の世界に入り込んだような映像美」(ル・モンド)。

「ロンズデールは素晴らしく、ジャンヌ・モローもこのどこか
 奇妙な空間の中で魅力を輝かせる」(ル・フィガロ)。

「オリヴェイラ監督にはいつも驚かされる。
 言葉は突き刺さるのに、まるで無言劇を観ているような
 感覚にさせられた」(女優の吉行和子)。

「この余白、この客観、この覚悟、
 どれだけ映画と向き合う、この境地に達することが出来るのか」
 (松江哲明監督)。

「あなたは何者ですか? と、
 一生かけて延々と考え続けられる相手こそが、
 ‘家族‘なのかも知れない。
  自分が何者かすらわからないのに」(横浜聡子監督)。

以上ご紹介まで。


映画鑑賞の後、九段下近くの蕎麦屋の老舗「一茶庵」に行き、
遅い昼食をとる。
時間が時間なので、客はほかに一人だけ。
腰のある美味しい三色蕎麦をいただく。
Commented by banban0501 at 2014-03-08 17:43
レンブラントの絵画のようだという
レビューで なんとなく映画の雰囲気が
わかりますね

息子の存在が 家族のキーポインである所

舞台はやはりポルトガルですか?

自分ではないと逃げる男は何ものなのでしょうね

それをしりたくて観客は見入ってしまうとしたら
監督の手法は やはり素晴らしいですね

映画や本の紹介 ありがたいです

また説明がお上手です
Commented by toshi-watanabe at 2014-03-09 08:58
banbanさん、
何時も早々とコメントいただき有難うございます。 映画の雰囲気が少しは分かっていただけたようですね。 どことはわかりませんが、ポルトガルの港町を考えてもよいのでは。
これからも本や映画の紹介をしていきたいと思います。
by toshi-watanabe | 2014-03-08 14:53 | 一般 | Comments(2)