国宝・十一面観音を訪ねる(その2)

さて、国宝・十一面観音を訪ねる旅、
二日目、最初の訪問先寺院は大阪藤井寺の道明寺。
真言宗の尼寺である。
道明寺は、もと菅原道真の祖先である土師(はじ)氏の
氏寺として創建され、はじめは土師寺と称する
尼寺だったが、道真公が亡くなったあと、
その号をとって道明寺と改められた。

延喜元年(901年)、大宰府に左遷されることになった
道真は道明寺に叔母の覚寿尼を訪ねて別れを惜しんだ。
「鳴けばこそ別れも憂けれ鶏の音のなからん里の暁もかな」
という歌を詠み、自刻の像を残して
別れを告げたと伝えられている。
この話は歌舞伎や浄瑠璃の「菅原伝授手習鑑」の
名場面として名高い。

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河内の国、道明寺に到着すると、
尼ご住職が出迎えられる。

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本堂では、般若心経を一同で唱和し参拝する。
尼ご住職がていねいに寺院の縁起とご本尊の
十一面観音について、説明される。

上記の通り、十一面観音像は道真公が彫られたものと
伝えられるが、もちろん史実ではない。
仏師は不詳だが、技術的にレベルの高い仏師の手による
事は間違いない。

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平安時代初期の作、ヒノキの一木造りとされてきたが、
最近の調査などで、カヤと判断されている。
頂上の仏面から蓮肉、胸飾や天衣にいたるまで、
一本のカヤの木から彫り出している。
髪や唇などに僅かに彩色を施しているほかは、
塗りを施さない素地仕上げとする、
全体に精緻な仕上げの檀像風の仏像である。
像高は98.0センチ、
眉は大きく弧を描き、鼻筋はすっと通った柔らかな表情。
胸を張り、両足を揃えて蓮花坐上に起立する姿は、
均整のとれた体躯と相まって温雅端正な形と
姿を作り上げている。
顔はふくよかで、しかも威厳があり、両目には黒石を嵌め込んで
生気のある眼を作り出す。

内陣に入り、ご本尊を間近に拝顔できる。
尼ご住職のご配慮に感謝である。

内陣横には、聖徳太子孝養立像も安置されている。

本堂の前には、花梨がたわわに実っている。

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さすがに綺麗に掃き清められた境内には、
木槵樹(もくげんじゅ)と菩提樹の木が植えられている。
道真公が40歳の時に道明寺にて
「大蔵経」を写経され、
その写経された「大蔵経」をおさめたところから
生えた木が木槵樹とのご説明あり。
この木槵樹の種子を分けていただく。

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道明寺を後に、再び奈良県に入る。
次の訪問先は、奈良県高取の壺坂寺である。
十一面千手観音が祀られているものの、国宝ではない。
大和三山奈良盆地を一望におさめる壺阪山に建つ。

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本堂には、ご本尊の十一面千手観音のほかに
大日如来坐像、子島荒神像など多くの仏像が安置されている。

三重塔。

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沢市とお里の「壺坂霊験記」で知られる。

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大型の石仏像も見られる。

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壺坂寺で、精進料理の昼食をいただく。


午後は、奈良市内の法華寺へ。
奈良時代には日本の総国分尼寺とされた法華寺。
山門と本堂。

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本堂は重要文化財、寄棟造り、本瓦葺き。
堂内厨子にご本尊、国宝十一面観音立像が安置されている。
「天竺(インド)の仏師が光明皇后の姿を模して作った」という
伝承はよく知られた話。
実際の制作は平安時代初期、9世紀前半とみられる。

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會津八一が、
「ふぢはらの おほききさきを うつしみに
 あひみるごとく あかきくちびる」
と詠んだ、十一面観音立像は、カヤ材による一木造。

制作当初から彩色や金箔を施していない。
髪、眉、髭などに群青、唇に朱、白目に白色を塗り、
瞳、肩に垂れる髪、冠や腕釧などには銅板を用いるほかは、
木肌の美しさを活かした素地仕上げ、
檀像風な平安時代初期の代表作。
女性のイメージが投影された、
官能的な美しさが魅力。
光背は放射状の茎に未開敷蓮華(みかいふれんげ)と
蓮の巻き葉を配した、優美で珍しい意匠である。
像高は100.0センチ。

庭園を散策する。

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くちなしの実。

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浴室、光月亭、横笛堂などが境内に散在。
自然植物園風のところもある。

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二日目の予定を終え、比較的早い時間に宿入り。
奈良の猿沢池の近くの宿。
夕食までの時間、猿沢池付近を散策する。
興福寺の五重塔。

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夕食は、ならまちの「江戸川」。

(続く)
by toshi-watanabe | 2012-11-14 10:37 | 寺院・仏像 | Comments(0)