わが友の逝去を悼む

平成23年、年の瀬も迫った11月25日、Oさんの訃報が届く。
その前日の夜、病院で息を引き取ったと聞き、唖然とするばかり。
ここ数年肝臓を悪くして、外出も間々ならない状態にあるとは
聞き及んでいたのだが、あまりにも突然の知らせに声を失う。

Oさんとは、仕事をしていた現役時代、社内で最も親しい間柄にあった。
同じ丑年生まれで気が合い、20代の若いころ数年は、
会社の定時後には近場の飲み屋に出かけて、
一献傾けながら、文学の話から世情諸々の話まで幅広く、
時間がたつのを忘れる程、話し込んだものである。
時にはお互いの家に泊まり込んだことも。

私が米国出向となり、その後10数年は没交渉となる。

時は移り、私が日本の本社へ帰任後、
長年のブランクもなきが如く、付き合いが再び始まる。
定時になると、どちらからともなく合図し、飲み屋へ向かう日々。
食べ物にはうるさく、板前さんと丁々発止と料理の話が始まる。
Oさん、好きなことはよく研究しているなと感心するばかり。
料理に使う包丁に関心を示したかと思うと、
包丁を研ぐ道具、砥石に興味を示し、とにかく詳しい。
話は天然砥石の産地にまで及ぶ。

60歳を前にOさんは定年退職し、悠々自適の生活に入る。
私のほうは顧問として、しばらく仕事を続ける。
Oさんは、自宅の庭にビニールハウスを設け、
その中に鉢を載せる棚をこしらえる。
鉢植えの東洋ランがあっという間に棚に並ぶ。
いずれも珍しい品種で値打ちものである。
手入れがとにかく大変らしい。
東洋ランの育成に関する薀蓄を聴かされる。
何鉢か分けてもらうが、我が家のベランダでは無理で、
説明書のコピーを頂きながら結局駄目にしてしまう。

その一方で、始めれれたのが篆刻。
研究熱心、独学で見事な腕前となって行く。
篆刻用石材の買物にも付き合わされる。
そのうちに中国人の専門家を見つけ、
篆刻した作品を見てもらうように。
この専門家も太鼓判を押してくれたと大喜び。
篆刻された石をいくつかいただき、
一つは落款として使っている。
篆刻用漢字の字典も手元に置き、
般若心経の全文字も篆刻したと聞いている。

読書も幅広い分野にわたっていた。
驚くほど記憶力がよく、書物の内容など、
すらすらと口をついて出てくるのがすごい。
話も上手で、なかなか説得力もあった。

ただその一方で、スポーツには関心がなかったのか、
あまり話を聞かない。
幼いころに、ちょっとした事故で片目を痛め、
片目はほとんど見えなかったようで、
そのあたりが原因で運動は苦手だったのかも知れぬ。
それでも20代のころには、オートバイを乗り回していたと聞く。
またマウンテンバイクにも詳しく、
元気な時にはギアを駆使して乗っていたらしい。

元気なころには、飲み屋で酔いも回ってくると、
場所をかえて、カラオケに付き合うこともしばしば。
銀座裏通りのAが定席で、終電近くまでと相成る。
個人タクシーの馴染みが出来て、タクシーでご帰還。
あとで奥様に聞くと、遅い時はタクシー代を入れた封筒を
玄関先に吊るしておいたそうだ。

カラオケで歌うのは、「函館の女」、「加賀の女」、「長崎の女」、
「薩摩の女」など、シリーズものだったり、色々と得意な曲があった。
どこで覚えるのか、新しい歌謡曲も聴かせてくれた。
彼がよく歌った、都はるみの「千年の古都」などは、
聴いているうちに、いつの間にか私の十八番にも。

11月27日、斎場にて告別式と初七日の法要が営まれる。
僧侶の読経に耳を傾けながら故人の思い出にふける。
焼香をして故人の冥福を祈る。
法要の後、奥様、二人の息子さん、ご兄弟や親族の皆さんと
一緒に火葬場に出かける。
待合室で待つ間、弟さんたちと酒を酌み交わしながら
故人の在りし日の様々なことに、
しばし花を咲かせる。
せめてもの故人の供養になったのではと思う。

どうしても書き加えておきたいことが一つある。
私と家内の縁結びとなってくれたことで、
Oさんには感謝しても感謝しきれない。
頭の上がらない存在であった。

Oさんとは実に呆気ない永久の別れとなってしまった。
もう一度酒を酌み交わしながら談笑したかった。
「おい」という声が耳元に聞こえそうだ。
手土産を持って行くので、あの世で元気で待っていて欲しい。
Oさん、どうか安らかにお眠りください。

                       合掌
Commented by hirofu at 2011-12-25 21:44 x
ご親友のご逝去を衷心からおくやみもうしあげます。
すばらしい追悼文ですね!
Commented by banban0501 at 2011-12-25 22:45
大切なご友人の思い出を
こうしてブログのかきとめておくことで
とても よい供養になったように思います

ご冥福をおいのりもうしあげます
Commented by toshi-watanabe at 2011-12-26 11:24
hirofuさん、

早速のコメント有難うございます。
亡き友への供養の一端にでもなればと、書き綴ってみました。
Commented by toshi-watanabe at 2011-12-26 11:26
banbanさん、

コメントいただき有難うございます。
記憶の新たなうちにと、亡き友への追悼文をまとめてみました。
by toshi-watanabe | 2011-12-25 12:34 | 一般 | Comments(4)